
わしね、最近このことわざをぼんやり考えとったんよ。「餅は餅屋」ってやつ。
子どもの頃からきいとるけど、なぜだか年とるごとに、ああ、そっか、という感じが強うなるんじゃ。それで調べてみたら、江戸時代の年末風景がうかぶようなね、そういう生きた話があるわけなんだ。今日はそれをお伝えしようと思とるんよ。
餅は餅屋、ってのはプロに任せるんが一番ということじゃ
「その道の専門家に任せるのが一番よい」という意味のことわざなんじゃ。読み方は「もちは もちや」。
つまりね、素人がどんなに頑張ってやってみても、所詮は素人の仕事。やっぱり餅をつくなら、餅つきのプロ、つまり餅屋さんにやってもらったほうが、早くて、うまくて、きれいに仕上がるんだ、という意味なんよ。
なぜ「餅」なのか―江戸時代の年末から生まれた話
年末、臼と杵を背負った職人たち
江戸時代のこと。年末になるとね、各地の家々では正月用の餅をつく準備が始まるわけなんだ。でもこれがちょっと厄介でね。
今みたいに機械で楽にできるわけじゃなし、臼に米をいれて、杵でぽんぽんぽん、と何度も何度もついていかんばいけん。これが力仕事で、時間もかかるんよ。
忙しい年末に、家族だけでやるのは間に合わんということで、「貸つき屋」や「貸餅屋」という商売人が出てくるようになったんだ。これはね、自分たちの臼と杵、そして何より技術を背負って、家から家へと出張していく職人たちなんじゃ。
プロの手で仕上がるもんは違う
ほいで気がつくわけなんよ。餅屋さんがついた餅ってのは、素人がついたもんと違うんだ。
手つきが早いし、力の加減がうまい。つまりね、色つやもきれいで、食感もええし、なんといっても素早く仕上がるんじゃ。
この光景が何度も何度も繰り返されるうちに、世間の人らが気づくようになった。「あ、やっぱり餅のことなら餅屋だ」って。そうしたら自然と、それが比喩に使われるようになって、今みたいなことわざになったわけなんだ。
実際、どんな時に使うもんか
失敗してから気づくパターン
会社のホームページを、IT知識なしで自分たちだけで作ってみたとしようや。色々なサイトを参考にして、テンプレートをいじってみたり、文言を工夫したり。
でもね、できあがってみると、素人っぽい、何か不格好なんじゃ。そこでやっと気づくわけなんよ。「あ、やっぱり餅は餅屋じゃな。初めからプロのウェブデザイナーさんに頼めばよかった」ってね。
プロを褒める時
一方で、プロの仕事ぶりを見て思わず「さすがだ」と感心する場面もあるんじゃ。建築士さんが設計した建物、税理士さんがまとめた決算書、美容師さんが作ったヘアスタイル。
こういう時に「ほんと、やっぱり餅は餅屋だ」と、相手の専門性を認め、敬う気持ちを込めて使ったりするんだ。
プロ側からのセルフブランディング
実はね、プロ自身も使う。「この部分のご相談は、わしたちにお任せください。餅は餅屋ですから」という風にね。自分たちの専門性に自信を持って、それを客さんに伝える時に使うわけなんじゃ。
昔は「酒は酒屋」「馬は馬方」も言うとったんじゃ
面白いもんでね、江戸時代には似た言い方がいくつもあったんだ。
- 「酒は酒屋」
- 「馬は馬方」
同じ構造でね。でもなぜだか現代に生き残ったのは「餅は餅屋」だけなんじゃ。
理由はね、上方のいろはかるたで「も」の札に採用されたからやと言われとる。かるたは子どもたちの遊びを通じて、ことわざが広がっていったわけなんだ。そうすると、何度も何度も目にしたり、耳にしたりするもんだから、自然と記憶に残る。昔の人らも、そういう工夫を上手にしとったわけじゃな。
ただ、すべてが「餅は餅屋」ではないんじゃろう
ここでね、ちょっと本音をいうと、このことわざも万能ではないんだ。
確かにね、専門家に任せれば品質も上がるし、時間も短縮できる。失敗のリスクも減らせるんだから、合理的なんじゃ。
でもね、素人だからこそ生まれる発想ってのもあるんよ。新しい分野では、まだ専門家がいないことだってある。そういう時は、むしろ素人が切り開いていかんばいけんわけなんだ。
それにね、何もかも丸投げしてたら、自分たちの知識や判断力が育たないじゃろう。ときどき「わしにもちょっとやらせてみてよ」という気持ちも大切なんじゃ。
だからね、「餅は餅屋」のことわざは大事なガイドでありながらも、全部がそうとは限らん。専門家に任せるべき場面と、自分たちでやらんばいけん場面を、見分ける目を持つ、そこが大事なんだと思うとるんよ。
